“上場準備”という名の荒波に、飛び込んでいく。

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ようやく来た上司

3ヶ月以上続いたハチャメチャ状態から、ようやくほんの少し抜け出せるかもしれない──

そう思えたのは、新しい上司がやってきてくれたからだった。

当時、確か30代前半〜中盤。
日焼けした肌にガッチリした体型。

どこかサーフィン帰りのような、ワイルドな雰囲気の会計士だった笑

ちなみに僕はというと、色白のひょろ長体型で、大学ではテニスサークルに所属していたタイプ。

見た目のギャップも相まって、正直これまであまり関わってこなかったタイプの人だった。

でも、そんな彼はめちゃくちゃ優秀だった。

経理・財務に関しては圧倒的な知識と経験を持っていて、

この会社での1年で、僕が経理として一番多くを学んだのは間違いなく彼からだったと思う。

“仕組み化”と“混乱”の狭間で

とはいえ、上司が来たからといって、急に何かが楽になるわけではなかった。

むしろやるべきことはどんどん増えて、忙しさはさらに加速していく。

それでも、

「会社の会計や管理のことを熟知している人」

が社内にいるだけで、精神的にはずいぶん救われた。

ようやく、落ち着いて仕事に向き合える日々が戻ってくるんかな……そんな希望もあった。

でも、そこはやっぱりベンチャー企業。

新しい事業が次々と立ち上がり、上司から見たら

「この管理部、まず基盤から作り直さなきゃヤバい」

という状態笑

まあ、そりゃそうか。
新卒2年目で社会人経験もほぼない僕がまわしてたんやから笑

突然の方向転換

そんな中、上司から話が合った

「監査法人の監査が入る」
「主幹事証券会社も決める」

……ん?これは……もしかして?

そう、当初は上場なんて目指していなかった会社が、

方針をガラッと変えて「上場準備」に突入することになったのだ。

いや、現時点でも正直ギリギリなんですけど笑

そこにさらに“上場”って、さらに忙しくなる未来しか見えないですね笑

でもその一方で、こんなチャンス、そうそう無い。やれるだけ、やってみたい、とも思っていた。

毎日仕事を重ねる中で、自分のレベルがどんどん上がっていくのを実感していたし、

会社もまさに1ヶ月ごとに急成長していて、社員たちの間にも“のし上がっていく”空気が漂っていた。

24歳の僕には、そのビッグウェーブに乗っていけること自体が、楽しくて仕方なかった。

会計のアップデート地獄と、海外出張のチャンス

上場準備に向けて、まず始まったのが「監査法人によるショートレビュー」。

会社の現状をチェックしてもらい、会計まわりの課題を洗い出してもらう。

そのフィードバックをもとに、
管理体制を“上場企業レベル”にまで引き上げていくわけだけど──

これが、想像以上にハードだった。

もともとの会計ルールを全部見直す必要があるだけでも大変なのに、

毎月のように新規プロジェクトが立ち上がって、

そのたびに会計スキームをゼロから設計しなきゃいけない。

しかも、海外子会社の対応まで発生し始めて、現場は完全に“ひっちゃかめっちゃか”状態笑

でも、そのおかげで人生初の「海外出張」にも行かせてもらえた。

ひたすら大変だったけど、それ以上に学びが詰まった期間だった。

チームが増え、会社が変わる

もちろん、さすがに上司と僕の2人だけでは上場準備は無理だった。

そこからは、経理にもう1人、労務にも1人、法務にも1人。

さらにパートさんやアルバイトさんも増えて、チームは少しずつ形になっていった。

僕が入社したときには30人ほどだった会社は、
わずか1年ほどで、100人近くの中規模企業に成長。

どんどん人が増えて、オフィスも増床し、それでも席が埋まり、活気が満ちていく。

業界内でも名前が知られ始め、
まるで“急上昇気流”に乗っているような感覚だった。

「若手の自分が、このステージにいるんだ」

平日も、土日も、ずっと仕事漬けだった。

でも、不思議と辛くはなかった。

たった2年前まで、就活で迷っていた自分が、
いま、上場を目指す会社の中で、本気で走っている。

若手の自分が、“そんなステージに立っている”という高揚感。
それが、この1年のすべてを支えていた気がする。

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