
結婚、そして会社の転機
3社目の1年目を終えた頃、僕と妻は結婚した。
当時僕が28歳で、妻は26歳だった。
まだコロナ前だったので、結婚式にも多くの人に来てもらい(確か100名弱)、
会社の上司には乾杯の挨拶を、そして社長には新郎側のご挨拶のスピーチまでやって頂いた。
本当に、お二人には今でも感謝している。
より一層仕事を頑張っていこうと思っていたが、ちょうどその頃、会社として大きな転機を迎えていた。
それが「上場かM&Aか」という選択だった。
上場か、それともM&Aか
上場して自社で資金調達をして会社を拡大していく道を選ぶのか。
それとも、どこかの会社の傘下に入り、シナジー効果を最大限に引き出しながら拡大を図っていくのか。
日本では「M&A=買われる」というイメージから、ややネガティブに捉えられがちだけど、
ベンチャー界隈では決して珍しい話ではなく、むしろ出口戦略としてごく普通の選択肢でもある。
結果として、経営陣はM&Aを選択し、そちらの道で進めることになった。
僕個人としては、
「もう一度、今度はマネージャーとして上場準備を経験してみたい」
という気持ちもあったが、一度経験済みということもあり、
「M&Aという違うフェーズを経験できるのも良いかもしれない」
と感じていた。
実務レベルで感じたこと
実際にM&Aの準備に入ってから感じたのは、
「実務レベルでは上場準備とあまり変わらなかった」
ということ(勿論実務レベルではなく、経営レベルではだいぶ話は違うと思う)。
たとえば、
・毎月の月次決算がしっかり締められているか
・社内の管理体制は整っているか
といった部分は、上場準備と同じように見られる。
ただ違いがあるとすれば、M&Aのほうが、よりスピーディに進んでいくという印象だった。
そして、紆余曲折ありながらも無事にM&Aは完了し、会社はある企業の子会社となった。
その後は、子会社の管理部担当として働き続けていたが、やがて上司も退職し、
「このまま一経理担当として仕事を続けていくのか?」
と自問するようになっていった。
「このままでいいのか?」という問い
2017年12月、僕はこの会社を退職した。
当時の僕には、いくつかの気づきや疑問があった。
上場準備やM&Aを通じて、株式会社の本質や資金調達の構造が少しずつ見えてきた
ベンチャーで管理部の立ち上げや上場準備をやる仕事は向いているし、これからもやっていける気がする
でも、それをこの先、65歳までやっていけるのだろうか?
そもそも、自分はこの働き方をしたくてレールを外れたんだっけ?
レールを降りて約4年半、力はついたけど…この先、自分はどうしたいんだろう?
そんなことをぐるぐる考えていた。
「自由に生きたい」という原点
もともとレールを降りた時に考えていたのは、
**「自由に生きたい」**という思いだった。
そして、ベンチャー企業で働いた経験を経て、ひとつの結論にたどり着く。
「僕もいつかは経営側にいきたい。そうしないと、本当の意味で“自由な生き方”はできない気がする」
この気持ちに、嘘偽りはないと感じた僕は、
「まずは最初は小さくでもいい。何か自分で仕事を始めよう」
そう決意して、この年、自分の会社を立ち上げた。


